第1章

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セレスティーヌ自身はそんな己れの境遇に不満を感じたことはなかったが、リディアを始めとする姫付きの侍女たちがたいそう不憫がり、極秘で秘密の舞踏会に連れ出すことを決めたのだった。 素直でおとなしい性格のセレスティーヌは、年上の女性に可愛いがられることが多かった。 姫付きの侍女たちも22、3……1番年下のリディアにしても20歳(はたち)だ。 侍女という立場を越えて、皆、セレスティーヌを実の妹のように可愛がっていた。 秘密舞踏会の話を持ちかけられた時、セレスティーヌにためらいがなかったわけではない。 だが、舞踏会という華やかな響きに抗いがたい魅力を感じ、今宵の舞踏会行きを決めたのだった。 侍女の中には「アイマスクをつけた方がいいのでは」と言う者もいたが、セレスティーヌの顔や名前は一般的には知られていない。 むろん、蒼雪姫のことも炎の女王のことも世界中の誰もが知っていたが、セレスティーヌは生まれてからずっと外界との接触を絶って城の中で暮らしてきたので、セレスティーヌの顔や名前を知る者は城の外にはいなかった。
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