第1章

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(いよいよだわ……) ひとり胸につぶやいて、姫はほっそりした白い指をきゅっと握りしめた。 期待と不安の入り交じった嘆息が、薔薇色の唇から漏れる。 「いよいよ今夜ね」 今度は口に出してつぶやき、胸の高鳴りをもてあまして、姫は四阿の支柱に細い腕を絡めた。 その時。 「姫さま、こんな所にいらしたんですか」 捜しましたよ、というニュアンスをこめて、侍女のリディアが走り寄ってきた。 「珍しいですね、ひとりで庭にお出になるなんて」 「何だか、じっとしていられなくて」 わかるでしょ、という思いをこめて、姫はそのぱっちりした瞳をリディアに向けた。
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