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あれから数日
あの日俺は宇佐美さんの家に行って頭を下げて謝った
宇佐美さんのお母さんはそんなの気にしなくてもいいのにと終始笑顔だった
俺のこともすんなりと許してくれた…
けれど俺にとってはそんなことどうでも良かった
謝りに行ってどうでもいいとか言うのも失礼極まりない話だが…
どうしても隣にいる宇佐美さんの悲しい…というかなにか失ったようなそんな顔が常に気になって仕方なかった
自分のせいでそうなったのだというのはわかっている…
宇佐見さんはきっと考えられないような…
それこそ人とあまり接して来なかった俺なんかが想像するよりもはるかに重い覚悟を持って俺に告白しようとしてきた
あそこまで聞けば彼女が何をこの先言うのかは手にとるように理解できた…
だけど……
俺はそれを途中で遮った…
怖かった…気持ちを聞くのが…
聞いてしまったら大変なことになるような気がした
宇佐美さんは…俺に好意を持ってくれていた…
もし断れば今までの関係が崩れてしまう…
もし断らずに交際を認めれば俺は宇佐美さんに自分の…すべてを晒すことになる
もちろん…過去あったことも全て
人間関係において深く関わって生きて来なかった俺にとって、他人に自分の全てを曝け出すのは怖くて仕方がなかった…
俺は自分の身勝手な恐怖心で宇佐美さんの覚悟を踏みにじったんだ…
こんな形で話を聞きたくないとまで言われたら、面と向かって断るよりも大きく傷つくことくらい容易に予想できたはずなのに…
人の心も読めない…
空気も読めない…
ただ人が怖くて逃げてばかりで…
変わろうって思っても上っ面だけ…
結局中身はなんにも変わってない…
惨めなただの…
チキン野郎だった…
空なんて…飛べるはずもなかった…
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