期末テストっ!…補修は一体誰の手に!?

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「今日は…もう帰るね…」 「千代っ!」 鞄を準備して去ろうとする彼女を俺は必死で止めようと言葉を発した まずは自分の過去なんかじゃない… 二人のことだ…!今のことだ…! そうでなきゃ…失ってしまう… なんとなくそんな気がして…怖くなって声をかけた しかし、千代は手を止めることなく準備を終え… 「今日は…ありがと…ちょっとでも聞いてくれて…」 「待って、千代っ!」 「やっぱり優しいね…こんなこと言っても…まだ止めてくれる…」 「それは…っ」 当たり前じゃないか… 君と一緒にいたいのは…これからも歩んでいきたいのは… 俺だって一緒だ… そう思っても言葉が出てこない… まるで少し前の自分に戻ったみたいに声が震えて… チキンなのもここまでくると罪だ 「今日はほんとに大丈夫…!」 俺が言葉を選んでいるうちに彼女はそう言って悲しそうに微笑んだ 「話、しておいで?」 「千代…」 そこは名前じゃないだろ… 止めろよ…今日はいいって 今は千代の方が大切だって…ずっとあの言葉を気にしてたって!! いつから自分はこんなに話せなくなったんだ? 「でも…ちゃんと…終わったら聞かせてね?」 「…っ!あっ…千代!!」 「じ、じゃあ、また明日っ…」 「あ…」 そう言って席を立った彼女の目には… うっすらと…だけど今にも零れ落ちそうな涙が浮かんでいた… その姿を見た時…伝えようと必死で頭をかき回していた言葉たちが跡形もなく消えていった 教室の戸を出ていくまで、俺は情けなく彼女の背中を見ることしかできなかった 「………」 何も…何も言えなかった 泣くまで我慢していた彼女に対して…優しい言葉の一つもかけてやれなかった 自分の気持ち一つも…伝えられなかった… 情けない姿の自分とは裏腹に… 窓から指す日差しは…もうすっかり夏のそれだった…
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