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その日の放課後。
私は早めに予備校に行き、チューター室に向かった。
でも、残念ながら雨宮さんは他の子に勉強を教えているところだった。
少し待ってみたが、いっこうに終わる気配はない。
時計を見ると、授業まであまり時間がない。
授業後にもう1度来ることにして、私は仕方なくチューター室を後にした。
授業が終わると桜がやってくる。
「それ、どうしたの?」
「ここに来たときからあった。忘れ物かな」
ギリギリに教室に入った私は、ドアに1番近い席に座った。
そして、机の隅にあった黒い時計を見つけたのだ。
その時計は、誰もが知っている有名なカジュアル時計だった。
しかし限定物のアナログ時計らしく、初めて見るデザインだった。
数字は全て漢数字。
文字盤の外、拾弐の上と六の下には、戌と寅の文字が入っていた。
「私、帰りにチューター室寄って行くから、落とし物も届けてくるよ」
「そっか。雨宮さんに報告だっけ?ちゃんと褒めてもらいなよ」
「・・・っ。分かってるよ」
自分から話題にしたくせに、雨宮さんの名前を聞くとドキッとする。
しかも褒めてもらえって・・・・雨宮さんから見たら大した点数じゃないのに。
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