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そんな気持ちを隠すように、そそくさと桜と分かれて目的の部屋に向かう。
そっと部屋を覗き込むと、チューター仲間と談笑する雨宮さんの姿が見えた。
普段は見られないリラックスした表情にドキンと胸が鳴る。
気持ちを落ち着かせて部屋に入ろうとした瞬間、雨宮さんと目が合った。
慌てて会釈をすると、爽やかな笑顔でこちらに向かってくる。
「質問?誰か呼ぼうか?数学だったら・・・」
「あ・・・あの、雨宮さんに・・・」
「僕?」
「は、はい。・・・あの、この間はありがとうございました!
お陰様で、この間の中間試験の数学、良かったです!」
「ほんとに?何点だったの?」
「78点・・・なんですけど、前回40点だったので、かなり上がったかと・・・」
緊張しながら、精一杯それだけ言うと、雨宮さんが柔らかく笑う。
「そっか。頑張ったね!」
「いえ、雨宮さんのお陰です。あの時教えてもらった解き方でやったら、かなり分かるようになりました」
「そんなこと無いよ。僕はヒントを教えただけ。
解けるようになったなら、それは高瀬さんの努力だよ」
雨宮さんはきっと頭が良いから、78点が良い点数なんて思わないだろうけど、あくまでも私の努力を認めてくれる雨宮さん。
優しすぎる!
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