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「あ、そういえば、さっき廊下で落とし物拾ったんですけど、これ事務に持って行けば良いですか?」
本当は落とし物を事務に持って行くことなんて分かっている。
だけど、もう少し雨宮さんと話していたかったから、わざと聞いてみた。
褒められただけで十分嬉しいのに、私は贅沢になってしまったようだ。
「どれ?・・・あ!!これ、俺の。どこにあった?さっき気付いたらなくて探してたんだ!」
「え?これ、雨宮さんの時計だったんですか?」
「良かった??。どこにあった?これ、超気に入ってたんだ。」
「2階の210教室、ですけど」
「・・・あぁ、じゃあさっき教室のホワイトボード消した時、汚れないように外して置いてきたんだ。
良かったぁ。マジありがとう。」
雨宮さんは嬉しそうに時計をつけると、急に考え深げに黙り込んだ。
そして、周りをはばかるように声を潜めた。
「・・・ねぇ、高瀬さんは今週末の模試、受ける?」
「あ、はい。」
分けが分からないまま、私も声を潜める。
「じゃあ、終わったらケーキでも奢らせて?
これほんと気に入ってるやつだったから、御礼がしたくて。」
「え!そ、そんな、いいですよ。たまたまですし。御礼なんて、気を遣わないで下さい」
せっかくのお誘いなのに、突然のことに驚いてつい否定していまう。
「いや、遠慮しないで。無理にとは言わないけど、僕がお礼したいだけだから。
それに、数学の点も良かったなら、お祝いしなきゃね。」
こちらに気を遣わせないように言ってくれる雨宮さん。
だったら・・・2人で出かけてみたい。
「え・・・・・あ、じゃあ、お言葉に甘えて・・・」
「決まりね。じゃあ、終わったら駅と反対側にあるコンビニで待ってて」
「はい。分かりました」
私の戸惑いをよそに雨宮さんは話を進めていく。
褒めてもらっただけでなく、まさか雨宮さんと2人で出かける日が来るなんて!!
模試は緊張するけれど、土曜日が楽しみになった。
今日は水曜日。
雨宮さんと出かけるまで、あと3日。
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