第2章 再会

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「あ、そういえば、さっき廊下で落とし物拾ったんですけど、これ事務に持って行けば良いですか?」 本当は落とし物を事務に持って行くことなんて分かっている。 だけど、もう少し雨宮さんと話していたかったから、わざと聞いてみた。 褒められただけで十分嬉しいのに、私は贅沢になってしまったようだ。 「どれ?・・・あ!!これ、俺の。どこにあった?さっき気付いたらなくて探してたんだ!」 「え?これ、雨宮さんの時計だったんですか?」 「良かった??。どこにあった?これ、超気に入ってたんだ。」 「2階の210教室、ですけど」 「・・・あぁ、じゃあさっき教室のホワイトボード消した時、汚れないように外して置いてきたんだ。 良かったぁ。マジありがとう。」 雨宮さんは嬉しそうに時計をつけると、急に考え深げに黙り込んだ。 そして、周りをはばかるように声を潜めた。 「・・・ねぇ、高瀬さんは今週末の模試、受ける?」 「あ、はい。」 分けが分からないまま、私も声を潜める。 「じゃあ、終わったらケーキでも奢らせて? これほんと気に入ってるやつだったから、御礼がしたくて。」 「え!そ、そんな、いいですよ。たまたまですし。御礼なんて、気を遣わないで下さい」 せっかくのお誘いなのに、突然のことに驚いてつい否定していまう。 「いや、遠慮しないで。無理にとは言わないけど、僕がお礼したいだけだから。 それに、数学の点も良かったなら、お祝いしなきゃね。」 こちらに気を遣わせないように言ってくれる雨宮さん。 だったら・・・2人で出かけてみたい。 「え・・・・・あ、じゃあ、お言葉に甘えて・・・」 「決まりね。じゃあ、終わったら駅と反対側にあるコンビニで待ってて」 「はい。分かりました」 私の戸惑いをよそに雨宮さんは話を進めていく。 褒めてもらっただけでなく、まさか雨宮さんと2人で出かける日が来るなんて!! 模試は緊張するけれど、土曜日が楽しみになった。 今日は水曜日。 雨宮さんと出かけるまで、あと3日。
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