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雨宮さんの言う通り、ケーキは絶品だった。
甘過ぎないクリームに、甘酸っぱいイチゴがよく合った。
「菜緒子ちゃんは,本当に美味しそうに食べるね」
満足そうに食べる私を見て、雨宮さんが微笑みかける。
「だって、本当に美味しいんですもん」
「そうやって嬉しそうに食べてくれたら、いっぱい美味しいところに連れて行ってあげたくなっちゃう」
「ほんとですか?じゃあまた連れて行って下さい」
いつの間にか呼び方が「高瀬さん」から、「菜緒子ちゃん」に変わっている。
そのことに気付いたら、社交辞令だと分かっていても、2回目もあるんじゃないか、なんて期待しそうになってしまう。
その後も、雨宮さんとの会話は盛り上がった。
まだまだ話したい。
この時間がいつまでも続けば良いのに・・・
そんな気持ちにストップをかけたのは、1本の電話だった。
「菜緒子!あんたこんな時間まで何やってんの!!
まったく、連絡もしないで。どこいるの?すぐ帰ってきなさい!!」
電話の主は母だった。
時計を見るともう夕飯の時間。
何も言わずに来てしまったので、激怒するのも仕方ない。
とりあえず母に謝り倒すと、雨宮さんのところに戻った。
「雨宮さん、ごめんなさい。そろそろ帰らないと」
「いや、こちらこそ遅くまで付き合わせてごめん。
今のおうちから?大丈夫?」
「はい。あの、大丈夫です」
私がうっかりしていたばかりに、雨宮さんに余計な気を遣わせてしまった。
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