第4章 はじまり

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後悔して俯いていると、雨宮さんは優しく笑った。 「それは、別にいいよ。それより、菜緒子ちゃんは、好きな人いないの? この間のメールでははぐらかしてたけど。」 あっさりと流された上、逆に聞かれてしまった。 まさか自分に返ってくるとは思わず、慌ててしまう。 「え・・・・い、いな・・・い、です。」 「ふぅん。」 雨宮さんは・・・きっと、違う。 彼への気持ちはまだ恋じゃない。 それに、例え恋だとしても本人を前にしては言えない。 動揺した気持ちを隠すように窓の外を見る。 外は強い雨が降っていて、町並みはぼんやりとしか見えない。 まるで、今の私から見た雨宮さんの気持ちみたいだ。 「よく降るね。」 私の視線を追うと、少しぎこちなくなった空気を変えるように 雨宮さんが話題を切り出す。 「俺、雨の音って好きなんだよね。 特に今日みたいな激しい雨。 なんか、うおぉ!ってテンション上がる」 「・・・そんな人、初めて見ました(笑)」 「そう?だって、荒々しいっていうか、自然の勢いを感じるじゃん」 改めて窓の外を見る。 轟音と共に煙る視界。 そんな風に雨を捉えたことはなかったけれど、 言われてみれば自然の怖さを感じる瞬間かもしれない。 それからはまた少しずつ会話が盛り上がり、 いつの間にか2人の間には笑いが絶えなくなっていた。
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