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後悔して俯いていると、雨宮さんは優しく笑った。
「それは、別にいいよ。それより、菜緒子ちゃんは、好きな人いないの?
この間のメールでははぐらかしてたけど。」
あっさりと流された上、逆に聞かれてしまった。
まさか自分に返ってくるとは思わず、慌ててしまう。
「え・・・・い、いな・・・い、です。」
「ふぅん。」
雨宮さんは・・・きっと、違う。
彼への気持ちはまだ恋じゃない。
それに、例え恋だとしても本人を前にしては言えない。
動揺した気持ちを隠すように窓の外を見る。
外は強い雨が降っていて、町並みはぼんやりとしか見えない。
まるで、今の私から見た雨宮さんの気持ちみたいだ。
「よく降るね。」
私の視線を追うと、少しぎこちなくなった空気を変えるように
雨宮さんが話題を切り出す。
「俺、雨の音って好きなんだよね。
特に今日みたいな激しい雨。
なんか、うおぉ!ってテンション上がる」
「・・・そんな人、初めて見ました(笑)」
「そう?だって、荒々しいっていうか、自然の勢いを感じるじゃん」
改めて窓の外を見る。
轟音と共に煙る視界。
そんな風に雨を捉えたことはなかったけれど、
言われてみれば自然の怖さを感じる瞬間かもしれない。
それからはまた少しずつ会話が盛り上がり、
いつの間にか2人の間には笑いが絶えなくなっていた。
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