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「じゃあ、そろそろ行こっか。夕飯、家なんでしょ?」
伝票を取り上げ、雨宮さんが立ち上がる。
「はい。お気遣い、ありがとうございます」
私も慌てて立ち上がる。
前回に続き、また雨宮さんに奢ってもらうのは申し訳ない。
私が荷物をまとめている間に
雨宮さんはさっさとレジへと向かう。
今日も雨宮さんは、私に払わせてくれないようだ。
会計が済み、また地下道を通って駅へと向かう。
「ごちそうさまでした」
「いいよ。また最寄り駅まで送って行くね」
「・・・ありがとうございます」
どうしてこうも楽しい時間はあっという間なのだろう。
寂しい思いと、次の約束はあるのかという不安が混ざる。
ちらりと隣の雨宮さんを見ると、電車の吊り広告を読んでいるような、
それでいて心ここにあらずといった雰囲気だった。
なんとなく声をかけづらくて黙ってしまう。
雨宮さんは今、何を思ってるんだろう。
私のこと、どう思ってる?
認めたくないと思いながら、とっくにどこかで気付いてる。
私は、雨宮さんが、好きだ。
雨宮さんは?
こんな風にご飯に誘ってくれるけど、期待して良いの?
雨宮さんの「気になる人」は・・・だれ?
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