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「あ、あぁかぁりぃぃ~なっ何てことを…!!人違い!!ものすっごい人違い!!」
「………へ?」
キョトンとした表情になる。
「人違い?こいつじゃないの?」
今だ呆然と立つ翔に、あかりは指をさし、友達に聞き返す。
聞かれた友達は青くなりながら全力で肯定する。
「ごめんなさい。人違いだったみたいで……あの、大丈夫です?」
翔に向かって頭をさげて謝罪する。そしてヒットしたケリの具合を聞く。
良くも悪くも素直なようだ。
「…痛かった、ですよね…その、何て言っていいのか…。本当にすみませんでした」
「……………」
あかりはさらに深く頭をさげる。
しゅんとなって謝るところが、何となく小動物を連想させた。
「あれ。あんた、最近転入してきた子だよね?確か、灯ちゃん」
翔の横から声を掛けてきたのは彼の友人の一人、宮田和樹だ。
「え?はい」
よく知ってるなぁ、と間抜けなことを考えていると、
「……か、和樹…くん…」
あかりの後ろから一人の女がおずおずと出てくる。
「っ美香?まさか…」
思い詰めた友人の表情にあかりの視線がすわってくる。
友人の表情だけで探していた相手だと察する。
「……歯ぁ、くいしばれーーーーっ!!」
バキィッと、小気味良い音が響く。
あかりが、笑って近づいてくる和樹を殴った。
そして殴られた本人、和樹はあまりのことに目を白黒させて倒れた。
翔も驚いた。
男を、しかもグーで殴る女を始めて見た。
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