36人が本棚に入れています
本棚に追加
豊臣綾女、厳格な覇王秀吉の妹であるがその性格は真逆で心根優しく穏やかな娘だ。
臙脂色の長い髪を高く結い上げて一つに纏め、露出の少ない蝶柄の紫色の着物に身を包み豊臣の家紋のあしらわれた打掛を羽織った彼女は豊臣随一の忠誠心を見せる家臣、石田三成を供に付けて広い大阪城の廊下を歩いていた。
春の暖かな日差しが差し込み、優しい風が頬をなでる。
そんな中、緊張した面持ちの三成を見て綾女は歩く速度を落とした。
「三成様、緊張しておられますか?」
綾女は一歩後ろを歩く三成に落ち着いた口調で問い掛ける。
すると三成は少し慌てたように返事を返した。
「は、はい。私のような人間が、貴女様と秀吉様の外出にお付き合いしても良いものか…と、少しばかり気が引けてしまって…」
いつもより口数が多いのは緊張からくるものだろう、そう考えると周りは無慈悲な男だと近寄りがたく感じられている人物も可愛らしく見えてくる…綾女は三成を見るとふわりと笑んで見せた。
.
最初のコメントを投稿しよう!