死を望む者

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握り締めた短剣を喉元に突き立てた。 引き抜けばゴボリと音を立てて溢れる赤、赤、赤。 荒い呼吸と共に口元からも赤い花が咲いていく。 この程度では死ねない。心臓が止まったとしても彼女は死なない。 冷水を全身に掛ければ、それはたちまち彼女の肌を癒す。 彼女は湖に張った薄氷の上に仰向けに寝そべっている。時間が立てば湖の中。 傷などたちまちの内に消えてしまう。 ざくりと胸の下を裂いた。薄い皮膚と肉に覆われた、皮膚の上からでも感じる骨を、血と脂に塗れた指で探る。 ぬるぬるとした粘液が絡み付き、指と指の間で糸を引く。ぬちゃっと音を立て、少女は肉を抉じ開けた。
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