作戦

3/15
前へ
/109ページ
次へ
俯いていた彼女が顔をあげた。 その顔が紅潮していて、目が真剣で… 「私、2年の笠原葵と言います。葉山先輩が好きです。お付き合いしてもらえますか?」 まっすぐな告白、聞いていて羨ましい位。 そんな他人事のように受け止めてしまうほど、俺の中にこの言葉は入ってこない。 こんな簡単に想いを伝えられたら、いいよね。 「笠原さん、どうもありがとう。でも、ごめんね。俺、好きな人いるんだ」 笠原さんの顔が悲しく歪む。 「彼女さん…ですか?」 「いや、俺の片想いで…だけど、あの人じゃないと駄目なんだ。だから、ごめんね」 目に涙を浮かべた彼女にハンカチを差しだそうとして、止めた。 接点は作らないほうが、この子のためだと思うから。 「じゃあ、用事があるから、行くね」 涙を流す女の子を残して行くなんて最低だな、と思うけど、中途半端はしたくないんだ。 俺はあの人しかいらないから。
/109ページ

最初のコメントを投稿しよう!

99人が本棚に入れています
本棚に追加