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俯いていた彼女が顔をあげた。
その顔が紅潮していて、目が真剣で…
「私、2年の笠原葵と言います。葉山先輩が好きです。お付き合いしてもらえますか?」
まっすぐな告白、聞いていて羨ましい位。
そんな他人事のように受け止めてしまうほど、俺の中にこの言葉は入ってこない。
こんな簡単に想いを伝えられたら、いいよね。
「笠原さん、どうもありがとう。でも、ごめんね。俺、好きな人いるんだ」
笠原さんの顔が悲しく歪む。
「彼女さん…ですか?」
「いや、俺の片想いで…だけど、あの人じゃないと駄目なんだ。だから、ごめんね」
目に涙を浮かべた彼女にハンカチを差しだそうとして、止めた。
接点は作らないほうが、この子のためだと思うから。
「じゃあ、用事があるから、行くね」
涙を流す女の子を残して行くなんて最低だな、と思うけど、中途半端はしたくないんだ。
俺はあの人しかいらないから。
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