鬼に幸あらんことを

その２

「また来たの」

「おい、言葉」

「私苦手なんの。
あと、貴方に使うなんて勿体ないじゃない。土方さん」

あの"腰イタ事件"から、土方さんは暇があれば私のいる店にやって来る。
本人は暇じゃないとは言っているが、頻度がね…
その日来たら、３～４日でまた来る。
これを暇以外に何て言おう。

「お酒飲めないのに、よく来るね」

「飲めないんじゃねぇよ、飲まないだけだ」

お酒は飲まず、料理を食べて半刻ぐらいしたら店を出る。

一度、「ご飯食べるだけなら料亭のが安いですよ？」と言ったら、「お前の舞が見たいんだよ」などと返ってきた。

普通に嬉しかった。
そうか、この人はこうやって世の女をタブらかしてるのか。