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『あら…
行っちゃったわね彼女』
微妙な笑顔で相槌打った後に
一瞬
泣きそうな顔を隠して
駆け出した君を追いかけようとしたけど
お手洗いだなんて言われたら
付いていけなくて
溜め息と同時に
この客への不快感が口から洩れる
『誰のせいだと思ってんの?』
『私は別にほんとの事言っただけよ?
だってそうじゃない
奨太が今まで噂になったタイプと全然違う』
『マスコミが盛り上げた只のでっち上げを
まるで事実みたいにあの子に言うなんて
…君、趣味悪いよね』
…イライラする
相手が客だとか
今更どうでもいい
『ちょっ…なぁに?
あの子…
ほんとに奨太の彼女なの?
嘘でしょ!?』
『そんな事君に嘘ついてどうするのさ
あの子は僕の彼女
なんか問題ある?
…最も僕のプライベート
君に干渉される筋合いないけど』
『だって…っ!!
奨太、あれだけお客に手は出さないって!!
興味ないって!!』
『…だから…
お客に手は出してないし
そもそも君にそんな事…』
ああ…めんどくさい
こんなの相手にしてるより
戻ってこない麻紀ちゃんが気になって
そもそも
こんなところに帰ってくるとは思えないし
彼女はそんなに馬鹿じゃない
『…もう僕行くから』
踵を返して
麻紀ちゃんが向かった先に目を向けると
『…あ…そういえば』
…今度は何…?
『あの子…どこかで見たと思ったけど
この間…店にいた専属デザイナーじゃないの?』
『…だから?』
『…………
…別に…?ふーん…
まぁいいわ
またお店…行くから』
何…急に
彼女の浮かべた薄笑いに
なんだかスッキリしない気持ちが心の中に渦巻く
『…ご来店
…お待ちしています』
別に待ってないけど
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