始まりは二度目から

98/185
前へ
/185ページ
次へ
『…で…? あのメールの内容だと ただ楽しかった…って訳でもなさそうだね?』 例によって オフィスの給湯室に連れ出されて 珈琲を淹れながら 私の顔を覗き込む華に 一通り大まかな説明をした 二人でデザイン考えて楽しかった事 パスタを食べて美味しかった事 ものの数秒で素敵なヘアスタイルにしてくれた桐谷さんの事… そこまで話して 一度言葉が詰まってしまう 『…それ ただのノロケですか?』 華はニヤニヤと笑いながら 珈琲を口にして ふぅ…と息をつくと 『…それだけじゃないんでしょ?』 と 心配そうな顔で 私のカップを差し出す 『…そう…だけど…』 暫く珈琲から立ち上る湯気を眺めて 室内に漂う香ばしい香りに 思い出すと胸の奥がキュッ…ってなるあの出来事を 華に話した 『…なにそれ なんなの!?その客!! こんな…ってあんた何様よ!?』 華は唇を噛み締め 悔しそうに顔を歪めて 『…桐谷さんの大事な 【常連様】…だよ… いつもお店にいる人』 その言葉を聞いて 華が思い出したように顔を上げた 『あ…それって 茶髪のロングストレートで 桐谷さんの事 “奨太~”っていつも呼んでるあの人!? この間私が相川さんと打ち合わせがあった時もいた!!』 『…ん…多分その人』 …そんなにしょっちゅういるんだ ほんとに桐谷さんが好きなんだな… そりゃあ…私なんて邪魔…だよね
/185ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2551人が本棚に入れています
本棚に追加