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ぶつかったグレイの瞳が頼りなさげに笑む。
「見んなって言ったのに。」
「 だって……。」
目を逸らしたらダメな気がした。
彼のために、彼の役に立ちたいなんて言いながら、私はまた更に彼を追い詰めていただけだったの?
純さんの痛みが分かっていなかった。
ーーごめんなさい。
声にならない謝罪を込めて純さんを見つめると、彼はふわっと私の頭をポンポンと撫でるように、軽く叩いてから、私の身体を解放した。
「ほんと格好つかないな、俺。」
純さんはポツリ呟くと、「ご飯、一緒に作ろうか。」と調理台に向き直り、料理を始めた。
「純さん。」
豆腐を切って、ネギを切る。
その様子を見ながら私は純さんに声をかけた。
格好つかなくなんかない。
なんて言えば純さんは楽になれる?
彼の中に渦巻くものはきっと、当事者にしか分からない鋭い痛み。
何を伝えれば、いいんだろう。
笑っていても泣いている彼に、私はなす術もなく、あまりに無力だった。
病気でごめん、だなんてそんなセリフ純さんに言わせて。
あの日の私の態度なんかより、きっと純さんはあの日以降の私の態度に傷付いてきたんだ。
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