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病気が彼の身体だけではなく、心までも傷付けている。
「まぁ、嫉妬?かな。無意味なことなんだけどね。そんなマイナスな自分になんか腹が立って、千尋に気を遣われてイラっとした。特別視すんなって。完璧、八つ当たり。ごめん。」
誰だって、病気になりたくてなるわけじゃなくて。
病気じゃない人が羨ましい。
どうして、自分が?
そう思うのは必然。
でも病気の負い目だけでなく、その当然湧きうる嫉妬の感情にまで負い目を抱く。
その辛さは当事者にしかわかり得ないし、想像の域を越えないけれど、辛いだろうな、と思う。
辛い、ただそれだけで済まない感情が純さんの中にもきっとあって。
その向ける矛先がない感情を何かのきっかけに露呈させると、今度はそんな自分を責める。
断ち切れない負の連鎖。
どうしたら、楽にしてあげられるのだろうか。
「いいです。本音聞けて、嬉しいです。」
そっと呟き目を閉じた。
身体に感じる純さんの温もり。
触れる感触。
聞こえるかすかな息遣い。
シャワーを浴びたばかりの爽やかな香りの中から拾う、彼の匂い。
視界を閉ざすと研ぎ澄まされる他の四感。
ーー彼の隣は安心する。
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