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昨夜寝付く時にハタと気付きかけたことが、少しずつ形になってきているような気がする。
ーー私、何に気付きかけたんだろう。
隣の純さんが体勢を変えたことで再び開いた瞳。
視覚が窓から覗く天気、彼の姿を捉え始めたらもう、突き詰めて考えるよりこの時間をまったり過ごしたくて。
しばらくそのまま何かを話すわけでもなく空を眺めて静かに過ごし、一緒に朝ご飯を用意して、一緒に食べた。
「じゃあ、お仕事頑張ってください。」
二人の行き先を分かついつもの交差点。
青信号を一つ見送ったところで、繋いでいた手を離し、手の平を上に向けて彼の前に差し出した。
純さんは私の手の平に彼の手を重ねると、グレイの瞳を細めて「ああ、千尋も仕事頑張れよ。」と、重ねた手をポンっと軽く叩いてから、青信号を渡って行った。
その後姿を見つめる。
多分、私たちの間にある問題はまだ解決していない。
そんなに単純でも、容易でもないことは、この一ヶ月の自分の精神状態を省みるだけで分かる。
(あ。振り返った。)
見守る中、店に着いた純さんが私へ目を向けてニッコリ笑ったのが見えた。
それだけで心が踊る。
(今日のお昼はサラダも食べようかな。)
少し取り戻した感情に比例するかのような食欲に、我ながら呆れたけれど、なんだかそれも少し嬉しくて。
昨日の朝より遥かに軽い足取りで事務所のあるビルへ足を踏み入れた。
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