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ーーもう少しマシな顔、させろ。
第三者の岡田さんから見て、どちらに向けてしまった言葉だったんだろう。
「何が?」
「いや、あの。マシな顔って。私に言いました?それとも純さん?」
顔をあげて岡田さんを見ると、彼はフッと頬を緩めた。
「へぇ?夏目も少し、成長したな。」
からかうような口調にムッとなる。
「なんですか、それ。」
「言葉の通りだよ。」
事務所に戻ると他の営業は出払っていた。
「で、どっちなんですか?」
「どっちでもないよ。」
午後からの外回りの準備をしているのか、応接スペースに書類を広げながら岡田さんは興味なさげに呟く。
「は?だって、昨日……。」
「ああ、言ったねぇ。夏目ならネコにそんなこと言わないで、って苦情が来るかと思いきや。へぇ。ちゃんと自覚あるんだ。」
「自覚?」
「ネコに心配させてる、自覚。」
またまた予想外の言葉に目を見開いた。
純さんが辛そうな顔をしていたとしたら、それは私が純さんを特別視して追い詰めていたからで……。
あれ?
「なんだよ。口開けてボケッとして。」
岡田さんの声に我に返る。
「心配?」
「は?なに、違うの?」
「いえ。心配、で……すか。」
岡田さんは上の空のように呟く私に怪訝そうな顔を向ける。
「なに?そりゃあ、彼女がそんなやつれてたら普通心配だろう。だからネコも送迎してんだろ?違うの?」
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