3/8
前へ
/305ページ
次へ
フワリ……風が舞う。 その風に流されるように後ろを振り返って初めて、すれ違った後だということに気付いた。 「パーマ、かな。」 捉えた後ろ姿。 ゆるいウェーブがかかった栗色の髪。 去りゆく後ろ姿に呟き、同時に視界に入った点滅する信号に焦って踵を返し走り出した。 職場についてすぐ、鏡の前でリップを塗る。 見惚れていて口が開いていたからか、やたらと唇が乾いていた。 「綺麗、だった、な。」 目の奥に焼き付いて離れないグレイの瞳。 最初に知った、あなたの一つ。 .
/305ページ

最初のコメントを投稿しよう!

917人が本棚に入れています
本棚に追加