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其の壱
右近の少将と落窪姫がめでたく結婚三日目の夜を過ごしたのち、阿漕が姫のお部屋に戻って参りました。
「失礼致します。
少将様、姫様。どうぞこちらを召し上がってくださいませ」
未だ夢見心地の少将は、気だるそうに上体を起こしながら、阿漕にまだ寝かせて欲しいと応じます。
「申し訳ありませんが、どうしてもこれは、今夜のうちに召し上がって頂きたいのです。
縁起物でございますから」
食い下がる阿漕の言葉に少将が眠い目をこすると、そこには綺麗な蒔絵の箱の蓋に、美しく盛り付けられた色とりどりの小さな餅がございました。
(なるほど。三日夜の餅か。
世話をする人もいない身の上と聞いていたが、きっと阿漕が色々算段してくれたのだろう)
阿漕の気配りに感心しながら、少将は身を起こし、餅に手を伸ばします。
「これを食べるのには、何か作法がいるのかい?」
この少将の質問に、阿漕は人知れず顔を明るくさせました。
「あらまあ、ご存じでは無いのですか?」
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