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すっかり指先を冷たくした姫の手を、少将は優しく包み込みながら微笑みます。
落窪姫も何とかそれに応えようとしますが、長年苛め抜かれた記憶が、姫の顔をこわばらせてしまうのです。
(可哀想に。
この愛しい人に、こんな辛そうな顔をさせるなんて……。
よし。その意地悪女の顔を、しかと拝んでやろうじゃないか)
右近の少将は、姫の肩をしっかりと抱きました。
その頃阿漕は、落窪姫の部屋から出てきたことを悟られないために、わざと反対側のお部屋まで回って、北の方の所へ向かいました。
息を切らす阿漕にかかる程の鼻息を吐いて、北の方は顔をしかめます。
「長い旅路から帰ったばかりのこちらが、疲れ切って休むのなら分かるけど。
阿漕、お前はここ数日、ずっと休みのようなもんだったろう?
なのに、出迎えも無しなんて、どういうつもりだい?
どうせまた、あの落窪と仲良くやっていたんだろうさ。嗚呼!忌々しい。
お前なんか、落窪へ突き返してやろうかねえ」
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