第四章

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北の方は、まるで阿漕が頼み込んで、三の君に仕えているようなことを言うのです。 (ふんっ。なにさ。 三の君様へのお役目を解いて下さるなら、願ったり叶ったりだわ) 心の中ではそうやって悪態をつきながら、阿漕は反省している振りを致します。 「申し訳ありません。 皆様のお出迎えに失礼の無いよう、綺麗な衣装に着替えていたのですわ」 「さあ、どうだかねえ。 それよりも、さっさと手水を準備しておくれ」 本当に優しさの欠片もない北の方に、阿漕は憤懣やるかたない思いでございました。 主のいない中納言邸は、それはそれは穏やかで。 落窪姫も素敵な婿君を迎えたばかり。 それなのに、この北の方の登場で、何もかもぶち壊しです。 阿漕はせめて、帰ることが出来ずに困っているであろう右近の少将に、何か御馳走を差し上げたい……と。 精進落としの宴会の料理を少しくすねて、落窪姫の部屋に運ばせました。 それから、少将と引き合わせてくれた夫の惟成にも、お礼のつもりで料理を運んだのでございます。
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