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北の方は、まるで阿漕が頼み込んで、三の君に仕えているようなことを言うのです。
(ふんっ。なにさ。
三の君様へのお役目を解いて下さるなら、願ったり叶ったりだわ)
心の中ではそうやって悪態をつきながら、阿漕は反省している振りを致します。
「申し訳ありません。
皆様のお出迎えに失礼の無いよう、綺麗な衣装に着替えていたのですわ」
「さあ、どうだかねえ。
それよりも、さっさと手水を準備しておくれ」
本当に優しさの欠片もない北の方に、阿漕は憤懣やるかたない思いでございました。
主のいない中納言邸は、それはそれは穏やかで。
落窪姫も素敵な婿君を迎えたばかり。
それなのに、この北の方の登場で、何もかもぶち壊しです。
阿漕はせめて、帰ることが出来ずに困っているであろう右近の少将に、何か御馳走を差し上げたい……と。
精進落としの宴会の料理を少しくすねて、落窪姫の部屋に運ばせました。
それから、少将と引き合わせてくれた夫の惟成にも、お礼のつもりで料理を運んだのでございます。
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