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昼過ぎには阿漕もやっと解放されて、落窪姫のお部屋に控えておりました。
右近の少将も帰るのをあきらめて、すっかりくつろいだ様子です。
そこへ、渡殿をこちらへ渡る足音が聞こえてきて、三人は同時に息を飲みました。
念のために、阿漕がお部屋を隔てる襖に錠を差していたので、すぐそこまでやって来た人物はお部屋に入れず、ガタガタと襖を揺らしております。
「何を生意気に錠なんか差しているのさ!
早くここを開けなさいっ!」
しびれを切らした北の方の怒鳴り声が、お部屋中に響きました。
(普段はこちらに寄りつきもしないのに、今日に限って……)
北の方はなるべく落窪姫に会わないよう、縫物などの御用の時も、女房を使いにして指図をしてきます。
ですから、このお部屋に北の方が来るのは、大変珍しい事なのです。
阿漕が身振りで、『几帳の後ろに隠れて下さい』と右近の少将に伝え、そこに落窪姫がぴったりと寄り添うように致します。
その間も、北の方は口汚く姫の名を呼び、襖を叩いたり蹴ったりしているのです。
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