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阿漕がどうにかごまかせないものか、と。
「こちらの姫様は、今日と明日、物忌みなのですわ。
日を改めて頂けませんか」
そう申しましたが。
「はんっ! 何を大げさなことを言ってるのさ。
居候の分際で、物忌みなどと言える身分かい?
いいから早く、ここを開けなさい!」
北の方の答えを聞きながら、落窪姫は怖さよりも恥ずかしさの方が増す気がして、阿漕に申しました。
「いいから開けてちょうだい」
姫はこれ以上、几帳の影に隠れている右近の少将に、北の方の怒鳴り声を聞かせたくないのです。
阿漕もそれを察して襖を開けると、北の方はずかずかとお部屋に入って参りました。
「今度錠なんか差したら、追い出してやるからね!
ここはお前の邸じゃないんだよ。だから、この部屋の来客を拒む権利なんて、お前には無いんだよ!」
鼻息も荒くそう言い終えると、北の方はぴたりと立ち止まり、お部屋の様子をぐるっと見渡しています。
「おや? なんだか部屋の様子が違うねえ?
それにお前も、いつもより随分と身ぎれいにしているじゃないか。
私がいない間に、ずいぶんと羽を伸ばしたようだねぇ……」
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