第四章

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結局右近の少将は、その日も明け方まで落窪姫と過ごしたのでございます。 明るくなる前に自分のお邸へ帰る少将を見送った後、落窪姫は、しみじみと阿漕に申しました。 「今日は色々と大変だったけど、阿漕、本当にありがとう。 あなたには感謝してもしきれないわ。 私が恥をかかないよう、いろいろとお支度を整えてくれて。それに、几帳があったのがとっても助かったわ。 何処からこんなに色々調達してきたの?」 「受領に嫁いだ叔母がおりまして、色々甘えさせてくれたのですわ」 阿漕は叔母とのやり取りや、惟成から聞いた、雨夜の冒険のお話などを、落窪姫に聞かせます。 右近の少将と出会ってから、目まぐるしく色んな事がございました。 けれど今、落窪姫は母を亡くしてから初めて、色んな意味で幸せを感じております。 阿漕もそう思っているようで。 「少将様は本当に姫様を愛しんでおいでですから、きっとその内、このお邸の方々が羨むような暮らしを出来るようになりますね」 阿漕はその時が早く来ればいいのに、と。手を合わせて目を瞑りました。 幸せに向かい始めたかに見えた落窪姫ですが、世の中はそう上手くはいかないものなのでございます。
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