第四章

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扇をヒラヒラと振りながら、蔵人の少将は立ち去ってしまいました。 惟成は、膝の力が抜けて、その場に座り込んでしまいます。 (嗚呼っ。何てことをしてしまったんだ。 よりにもよって、あの文が三の君様に渡ってしまうとは……。 こんなこと阿漕に言ったら、どれだけ叱られてしまうことかっ) 考えるだけで震えの来る惟成ですが、黙っているわけにもいきません。 小さく肩を竦めながら阿漕の元を訪れて、事の顛末を話したのです。 案の定、阿漕は真っ赤になって言葉を失い、それから惟成の腕を数回大きく叩きました。 「信じられない!! どうしてそんな失敗をしてしまうの? ただでさえ北の方様は、姫様の御部屋や衣装の様子が違うのを見て、訝しげにされていたのに。 もし姫様のご結婚のことが知れたら……。 嗚呼ああっ。惟成さんの、バカバカバカ―――!」 阿漕はどうしていいのか、策など全く思いつきません。 そして、二人が呆然としているまさにその時、落窪姫の文は、最も好ましく無い人の手に、渡ってしまったのでございます。
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