第四章

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その話に、落窪姫の胸にチクリと痛みが走りました。 貴族の男にとって、妻を複数娶ることは珍しい事ではございません。 さらに、この時代の結婚は、妻の家が経済的に夫を支えるモノでした。 けれど、右近の少将を支えることなど出来ない落窪姫は、少将が新たに誰かと結婚しても、文句など言えないのです。 「そのようなお話があるのですか……」 落窪姫は平気なふりをしようと致しましたが、やはり声が震えてしまいます。 そんな姫を優しく見つめると、右近の少将は姫の頬を両手で優しく包み込みました。 「どうしてそんなに悲しそうな顔をするの。 私があなた以外の誰かを愛することなど、あるはずが無いでしょう? お約束しますよ? 一生あなた以外に妻も恋人も作らないと。 だけどね、どうしてこんな話をしたかと言うと。私ももういい歳だから、やはり結婚したことを公表していないと、縁談話はいくらでも持ち上がるんです。 だから、貴方との結婚を公表したいのだけど……」 「それは、駄目ですわ。 もしこの事が知られたら、きっと少将様に会えなくなってしまいます」
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