第四章

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「まあ、姫様はご気分が優れなくてまだ寝ていらっしゃるのですわ。 もうすぐ起きられると思いますから、その時にお伝えしておきます」 阿漕がそう申すと、使いの者は絹をそこに置いて去って行きます。 (蔵人の少将様が、臨時の賀茂祭の舞人を務められるから、姫様に縫物のお仕事を言ってくるとは思ったけど、こんなにたくさん……) 阿漕があきれるくらいたくさんの絹が、そこには置かれておりました。 落窪姫も几帳の内側でそのやり取りを聞いておりましたので、急いで仕立ててしまわなければ、と。夜具から身を起こそうと致します。 「いいじゃないか、縫物なんて放っておけば。まだ一緒にこうやって横になっていましょうよ」 それを右近の少将の腕が阻みました。 (貴い身分の姫君に、針子のような仕事をさせるなんて、本当にけしからん継母だ) 嗜みとして裁縫をする貴族の姫は多いですが、実際に殿方の衣装をせっせとこしらえるなど、下働きの女の仕事なのです。 それを当たり前のように落窪姫に言いつけてくる北の方に、右近の少将はあきれた気持ちになりました。
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