第四章

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そういって片目を瞑る右近の少将に、落窪姫に笑顔が戻ります。 「まあ、少将様ったら」 うふふと声を上げる姫を見て、右近の少将も優しく微笑みました。 けれど、その心中は穏やかではございません。 (継母も酷い人だとは思ったけど……。 中納言殿も、実の親だというのにあの態度とは。 これ程美しく心も優しいこの姫に、あんな悲しそうな顔をさせるなんて、許せないな。 姫はきっと、どんな仕打ちにあってもそれを許してしまうんだろうけど、私はそうはいかないぞ) 落窪姫の豊かな髪を指に絡ませながら、右近の少将はそう決意致します。 「貴方のことは、誰もが羨むくらいに幸せにしてみせます。 だから、貴方も私を信じて待っていて下さいますよね?」 少将が姫の目をじっと見つめながらそう言うと、 「ええ、もちろんですわ」 落窪姫も瞳を潤ませてそう答えたのでございます。
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