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身分ではずいぶん下の自分の手を、親しげに握る落窪姫に、夏月はやるせない気持ちになりました。
「本当に、おかしなことです。北の方様がなさぬ仲の貴方様を邪険に思われるのは、まだ分かります。
けれど、こちらにおられる四人の姫様たちは、貴方様とも血を分けた御姉妹なはず。
それを、声を掛けることも無く、ご自分の婿君の衣装の仕立てを押し付ける始末。
それに最近、四の君様のご縁談の話が持ち上がっているのです。
年上である貴方様を差し置いて、あちらの縁談を先に進めるなんて……。
どうしてそのような酷い仕打ちが出来るのか、私には分かりかねますっ」
眉根を寄せて憤慨する夏月は、本当に落窪姫に同情しているようです。
それだけで、姫は今までの辛さから、救われる思いがしました。
「貴方がそんな風に怒ってくれるだけで、満足です。
それに、縁談なんて、おめでたいお話ですわ。
お相手はどなたなのかしら?」
「左大将様の御子息の右近の少将様と聞いております。
なんでも、ご器量もご気立ても良く、蔵人の少将様にも勝る出世頭とか。
まだ独身でいらっしゃるので、娘のいる貴族なら、どなたでも婿に迎えたいと思うような、都きっての公達というお話ですわ」
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