第一章

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「分かった、分かったよ」 もはや泣き真似も忘れて肩で息をする阿漕を、惟成はまあまあと、両手で制します。 「そんなに美しくて高貴なお姫様なのに、召使のように扱われているなんて、かわいそうだなあ。 せめて通う殿方の一人でもあれば、救われるのにね」 惟成がなんとなく口にしたその言葉に、阿漕は頬を緩ませました。 「そうっ。そうなのよ。 私もどなたか素敵な殿方が姫様を見初めて下さって、このお邸から盗み出してくれればいいのに……って、思わず願ってしまうの。 でも、私には伝手もないし、表だって動けば、きっとこのお邸の北の方様に見つかって、姫様はもっとひどい扱いを受けることになってしまうわ。 姫様はお美しいだけじゃなくて、心根の素晴らしい方だから、きっとどんな殿方のお心も魅了して差し上げることができるのに」 「うーん……。 そういうことなら、俺にアテがないわけでもないけど」
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