第五章

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落窪姫は少し前に、右近の少将の口からこの縁談話を聞いておりましたので、なんだか可笑しくなって袖で口元を抑え、うふふと微笑みます。 (良かった、姫にきちんとお話をしておいて) 几帳の裏に潜んだ少将も、ほっと胸をなで下ろします。 それに、この家では縁談のことをどのように話しているのか気になって、話が良く聞こえるように耳をそばだてました。 「そのお話は、どうなったのですか?」 落窪姫の先が気になり、夏月に催促致します。 「さあ、はっきりとしたことは聞いておりませんが。 内々にご婚儀のお支度をなさっているらしいので、おそらく右近の少将様もご承諾なさったのではないでしょうか?」 その答えを聞いた少将は、思わず几帳を倒してしまいそうになりました。 (婚儀の支度など、何を勝手なことを。私が承諾するはずは無いというのに……) 流石にここで夏月の前に姿を現すわけにはいきませんので、少将はぐっとこらえます。 「婿君が増えてしまうと、また姫様の御仕事が増えてしまいますね……。 姫様には、何か良いお話は無いのですか? 姫様も思い切って、ご結婚なさってはいかがでしょう」
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