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右近の少将は、大変不快そうな顔で話を続けます。
「夏月も、そんな交野の少将に直接会って、その魅力に参ってしまっている様だから、きっとあなたのことを熱心にお話したんじゃないかと思うと……」
少将は落窪姫を自分の胸に抱き、その香しい髪に顔を埋めます。
「どうして何も仰らないの?
本当は良いお話を頂いたと思っているけれど、私への義理立てで、お答えがしにくいのですか。
とにかく都中の女が、交野の少将に夢中なのだもの。
貴方が心惹かれたって無理は無いですよ」
右近の少将はどんどん機嫌を悪くさせます。けれど落窪姫はそんな少将が愛おしくて、クスリと笑みをこぼしました。
「それでは少将様は、私が都の女の内に入らないと仰るのですね。
だって私は、その交野の少将と言うお方に、ちっとも心が惹かれませんもの」
少将の言葉の上げ足を取るそのいい方は、とても可愛らしく、右近の少将は体を離して姫を見下ろします。
やはり頭の回転も速い素晴らしい人柄の姫だと、愛おしさが増すばかりなのです。
「ふふふ。参ったなぁ、一本取られましたね。
貴方は都の中で一番のお姫様ですよ。望めば帝の中宮(帝の正妃)にもなれるほどです」
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