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(よしっ!かかったわね、惟成さん)
心の中でコブシを握りながら、阿漕は惟成の手をひしと握りました。
「それ、本当? 惟成さん」
顔を輝かせて自分の手を握る阿漕が可愛くて、惟成は大きくうなずいてその手を握り返します。
「ああ。俺の乳兄弟の若様なんだけど、まだ決まったお人がいなくて、ふさわしい姫君を探していらっしゃるんだ。
若様もお美しい方だし、お血筋も確かでいらっしゃるから、きっとお似合いだと思うよ?」
惟成は心の中で
(もしことがうまく運んで落窪姫と若様が一緒になれば、俺も阿漕と一緒に過ごす時間が増えるから、一石二鳥だ)
そんな風に下心を抱いておりましたけど、とりあえずそれは胸に閉まって、阿漕に任せろよと笑って見せます。
阿漕は阿漕で、自分のお芝居に惟成がうまくかかってくれたことを、心の中でほくそ笑みながら、嬉しそうに笑顔を返しました。
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