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「あなたっ!ちょっと聞いて下さいな!」
朝っぱらから北の方に酷い剣幕で詰め寄られ、源中納言は顔をしかめます。
「嗚呼っ。口にするのも忌々しい事ですが、実はあの落窪が、とんでもないことをしでかしてくれたんです。
こちらと全く縁のない娘ならば、どうとでもできますが、そうもいかないので、ワタクシ、困り果てておりますのよ!」
心の底から胸を痛めているとでも言うように、北の方は目じりを拭うように袖を押し付けました。
「落窪の君が、どうしたと言うんだね」
源中納言が眠気の残る眼を擦って、北の方に向き合います。それをちらりと見止めた北の方は、袖でにやける口元を隠しながら、眉間にしわを寄せわざとらしくため息を吐くのです。
「はあ……。あなたの耳に入れるのは、本意ではないんですが、ねえ。事が事でございますから。
実は、三の君の婿君の家来の、惟成という男が、女房の阿漕に通っていたんです。それが、惟成の本当の狙いは、あの落窪だったようで……。
ついに夜這いをしかけて、関係を結んでしまったようなのですわ。けれど、惟成も爪の甘い男で、落窪からの文を、うっかり落としてしまったのですよ。
それを運悪く、蔵人の少将に拾われてしまって。
あの婿君も色々と勘の利くお方ですから、惟成に問い詰めたら、渋々落窪との関係を、白状したらしいですわ」
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