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怒りで顔を紅くする源中納言に、北の方は追い打ちのように申しました。
「ええ、ええ。本当に残念なことですわ。
四の君の縁談がまとまれば、やっとあの子の身の上も考えてやれると思っていた矢先ですのに。
ですが、こうなっては仕方ありません。
もし、このまま放っておけば、惟成は落窪を邸から盗み出してでも、想いを遂げようとするでしょう。
そのような事になっては、この中納言邸の名折れにございます。
ここは一つ、落窪を物置にでも閉じ込めて見張りを付け、ほとぼりが冷めるまでやり過ごすほか、策はございません。
ワタクシにお任せ頂けますこと?」
「それがいい! すぐにでも北の物置に閉じ込めてしまいなさい!」
歳のせいか怒りのせいか。源中納言はそのような酷い事を、事もなげに言い放ちました。
その言葉に、それでは早速…と。北の方は衣の裾を軽やかに引き上げながら、落窪姫のお部屋に向かいました。
引き戸を叩きもせず掛け声も無しににざざっと開かれ、驚いて顔を上げた落窪姫の目に、恍惚とした表情の北の方が映ります。
「おやおや、今日は一人なのかい?
全く困ったことをしでかしたもんだねえ。
御父上もたいそうお怒りで、このお邸の面汚しだと、嘆いておいでだったよ?
さあ、さっさと立つんだよ。今日からお前は、北の物置で暮らすんだからねえ!」
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