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(どうしてこんなことになってしまったのかしら。
それにお父様は、どうしてあんなに怒っていらっしゃるのでしょう……。
右近の少将様との結婚が、それ程までに許せないことだと言うのかしら。
阿漕は……。あの子は今、どうしているのかしら。北の方様に、出て行けと言われてしまって、途方に暮れていないかしら)
鼻につく様々な臭いに呆然としながら、落窪姫は可愛らしい阿漕の顔を思い浮かべます。
その頃阿漕は、自分の主人である三の君に、文を送っておりました。
『三の君様、私は貴方様を心からお慕い申しあげております。
けれど、北の方様より身に覚えのない誹りを受けて、このお邸を追い出されそうなのです。
確かに私は、落窪の君様にお仕えしておりましたが、今は貴方様に奉公する身。
最近の落窪の君様のご様子など、よくは存じ上げないのです。
何があったのかも分からずに、途方に暮れております。
どうか、貴方様から、北の方様にお取り成し下さいませ。
私はこれからもずっと、三の君様にお仕えしたいのでございます』
まずこのお邸に残る手立てと、状況を知る手段を得るために、阿漕は涙ながらに文を認めました。
その文を読んだ三の君も、器量が良く働き者の阿漕に同情を寄せ、阿漕を部屋に呼びつけました。
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