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もちろん三の君からの申し出を、北の方は猛反対致しましたが、阿漕の普段の働きと彼女がどれほど必要なのかを語られて、しぶしぶ了承いたします。
とりあえず、このお邸に残る許しがもらえたと、阿漕はほっと胸をなで下ろしました。
けれど、食事も与えられずに寒い物置部屋に閉じ込められた落窪姫のことを思うと、何か策を講じなければと、気ばかりが急いてしまいます。
そんな阿漕の様子を、阿漕の元で働く童の露も、ハラハラと見守っておりました。
下手に動いて北の方に見咎められると、今度こそお邸を追い出されかねないので、阿漕は自分の局でああでもないこうでもないと、考えを巡らせます。
そうこうしている内に日が落ちて、露が灯してくれた灯台の明かりに、阿漕ははっと致しました。
(今宵もきっと右近の少将様がおいでになるはず。なんとご説明差し上げればよいのかしら……)
そこへ、引き戸を叩く音が聞こえます。
「阿漕? 俺だ、惟成だ。なんだか姫様のお部屋の様子がおかしいのだけど、いったいどうしたんだ?」
阿漕が急いで戸を開き、惟成を部屋に招き入れようとすると、隣に右近の少将も立っているではありませんか。
「も、申し訳ございませんっ。ご説明申し上げますから、中にお入りください」
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