第一章

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(でも、こんな風に涙ひとつで、私の気持ちに心を寄せてくれるなんて、この人と一緒になって、本当に良かった) そうは言っても、一夫多妻が常であったこの時代。 妻は自分一人だと約束してくれて、こうしてきちんと自分を訪ねてきてくれる気のいい惟成を、阿漕は心底愛しく思います。 (姫様にも、私と同じように、一途な殿方と幸せになって欲しい) その為には、決して遊び心ではなく、一生を共にするお覚悟を相手の方には求めたいけど、と。 阿漕は惟成に言い含めようと思いましたが……。 手を取り合って見つめあう二人の間には、恋人同士の艶やかな空気が流れ出しておりました。 (まあそれは、明日の朝、お見送りする時でも、いいかしら) そうしてそのまま阿漕は惟成の胸にしなだれて、二人は一緒に褥に入り、甘いひと時を過ごしたのでございます。
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