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信頼する阿漕の声に、落窪姫は心を救われます。
「ええ、ご安心ください。阿漕は姫様のお側を離れたり致しませんわ。
本当はすぐにでも参りたかったのですけど、日が高いうちは北の方様が目を光らせていて、こちらに近づくことが出来なかったんです。
姫様、心細かったですよね……。申し訳ありませんわ」
「ううん、お前が来てくれて、どんなに嬉しいか。
でもね、阿漕。
私、いったいどうしてこんな目に遭っているのか……。やはり、少将様とのことが原因なのかしら」
落窪姫も安心したのか、その声が涙で少し震えております。
阿漕もやはり、震える声で北の方の策略を、かいつまんで落窪姫に聞かせました。
その話の内容に、落窪姫は気が遠くなるのです。
(生さぬ仲の北の方様が、私を良く思われないことは仕方ないとして。
お父様までそのような嘘をお信じになるなんて……)
そう思うと辛くてやるせなくて、落窪姫の目からは次々に涙が流れ落ちます。
「けれど姫様。右近の少将様が先ほどおいでになり、事情をご説明致しました。
少将様も嘆いておいでで、姫様への伝言を預かって参りましたわ」
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