860人が本棚に入れています
本棚に追加
阿漕が三郎君の姿を探してお邸を歩いていると、元気に駆け回る三郎君の姿がございました。
「三郎君様、三郎君様」
阿漕がにこにこと笑顔を浮かべて名前を呼ぶと、三郎君はその足元に可愛らしく駆けてくるのです。
(北の方様と血の繋がりがあるとは思えないほど、本当にお可愛らしいわ)
中央で分け耳の横で角髪(ミズラ)に結った髪は、つやつやと若々しく、走り回っていたせいか、頬が紅く色づいております。
「どーしたの? 阿漕。なんだかあんまり元気がないねえ」
大きな目で阿漕を見上げて、三郎君は首を傾げました。
「まあっ。三郎君様は賢くていらっしゃいますわね。
実はとっても悲しい事がございまして、三郎君様のお力をお借りしたいのですわ」
「なあに? 僕に出来ることなら、何でも言ってね?」
三郎君は阿漕の手を引っ張って、近くの階段に腰を降ろします。
「三郎君様は、落窪の君様のことを、お好きでいらっしゃいますか?」
「落窪のお姉ちゃま? うん。大好きだよ? だってお姉ちゃまはお綺麗だし、いつも僕にお優しいもの」
最初のコメントを投稿しよう!