第五章

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阿漕が三郎君の姿を探してお邸を歩いていると、元気に駆け回る三郎君の姿がございました。 「三郎君様、三郎君様」 阿漕がにこにこと笑顔を浮かべて名前を呼ぶと、三郎君はその足元に可愛らしく駆けてくるのです。 (北の方様と血の繋がりがあるとは思えないほど、本当にお可愛らしいわ) 中央で分け耳の横で角髪(ミズラ)に結った髪は、つやつやと若々しく、走り回っていたせいか、頬が紅く色づいております。 「どーしたの? 阿漕。なんだかあんまり元気がないねえ」 大きな目で阿漕を見上げて、三郎君は首を傾げました。 「まあっ。三郎君様は賢くていらっしゃいますわね。 実はとっても悲しい事がございまして、三郎君様のお力をお借りしたいのですわ」 「なあに? 僕に出来ることなら、何でも言ってね?」 三郎君は阿漕の手を引っ張って、近くの階段に腰を降ろします。 「三郎君様は、落窪の君様のことを、お好きでいらっしゃいますか?」 「落窪のお姉ちゃま? うん。大好きだよ? だってお姉ちゃまはお綺麗だし、いつも僕にお優しいもの」
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