第二章

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其の壱 ここは宮中の警護を行う近衛府の長官、左大将のお邸。 母親のくどくどしいお説教を、右から左へと聞き流しているのは、右近の少将・藤原道頼でございます。 少将はとっくに妻を持っても良い年頃なのに、未だに独身を通しているので、最近は母親や乳母に捕まるたびに、早く結婚をしなさいと口うるさく言われているのでした。 「はいはい分かりましたよ。 私だって貴族に生まれたからには、いずれきちんとした妻を持って、世間に認めてもらうことが大切だってことは、心得ていますよ。 でも、見たこともない女を妻とするのは、それなりに覚悟のいることなんです。 そのうち心を決めて母上を安心させて差し上げますので、そうせっつかないで下さい。 こうも周りが口うるさくては、気持ちも萎えてしまいます」 少将は心底うんざりしているという風に、大きなため息をついて立ち上がりました。
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