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突然誹りを受けて、流石の典薬助もむっとして阿漕に答えます。
「何を言っておるのじゃ。わしはお姫さんが胸が苦しいと言うから、診察して差し上げてたんじゃぞっ。
それを男女の仲を迫ったかのように……」
阿漕が二人の様子を窺うと、なるほどまだ、帯紐も解かれた様子はありません。
けれど医者とは名ばかりの耄碌爺さんに、どんな見立てが出来るのかと、阿漕は典薬助を睨みつけました。
「そんな風に姫様を抱えていても、治るものも治りませんわっ。
温石(オンジャク・焼いた石を布でくるんだもの)を胸に当てて、温めてはどうでしょう」
阿漕がそう言うと、落窪姫も
「そうね、そうして頂きたいわ」
そう言って典薬助の腕を逃れようと致します。
阿漕はここぞとばかりに膝を進めて、典薬助に申しました。
「私のような下っ端の女房が頼んでも、こんな夜中に誰も温石の用意などしてはくれませんわ。
今は貴方様だけが頼りにございます。
婿君として、姫様に誠意を見せる、良い機会にございましょう。
どうか温石を調達してきてくださいませ」
そのように懇願されては、典薬助も悪い気は致しません。
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