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（なーにが後朝の文よ。そんなお文をもらうようなこと、何一つ無かったじゃないのっ。
でも、これで右近の少将様からの文を、姫様にお渡しできるわ。
爺さん、あんたもなかなか役に立つじゃない）
阿漕はにこにことそのお文を受け取って、もう一度物置部屋に戻りました。
「あのう、北の方様。典薬助殿から、落窪の君様へのお手紙を預かってきたのですが……」
北の方は、口が裂けると思う程にんまり笑って、差した錠を解きながら申します。
「あらまあ、結構なことだねえ。そうやって文を交し合って、お互いの気持ちを思いやることは、素晴らしい事だよねえ」
その文が、昨夜典薬助と落窪姫が契った証しだと、北の方は機嫌を良くしたのです。
阿漕は典薬助からのお文と一緒に、右近の少将からのお文を、落窪姫に渡しました。
もちろん、姫が真っ先に開いたのは、綺麗な薄様に書かれた、さわやかに香る少将からのお文でございます。
『貴方を救いだせない自分自身に腹が立って仕方ありません。
貴方の不幸を一緒に嘆きたいのに、流れる涙は、私の袖しか知りません。
早くお会いしたい。お会いして、慰めて差し上げたい。貴方と離れて、想いは強くなるばかりです』
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