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夏月が耳打ちする内容に、阿漕も笑いが堪えられません。こんなに笑ったのは久しぶりだと、阿漕は胸が救われる思いでございました。
早速、夏月は計画を実行するために、典薬助のお部屋近くをそぞろ歩きます。
器量の良い女房に目が無い典薬助は、夏月が歩く姿を見て、部屋から顔を出しにんまりと笑いました。
「夏月ちゃーん。どうしたのかね、こんな所で」
呼び止められた夏月は、手にしていた紙の包みを、さりげなく取り落とす振りを致します。
ぽとりと落ちた紙の包みをひょいと拾い上げて、典薬助は夏月に近づきました。
「なんじゃい、これは。なにやら薬の様じゃが……」
典薬助も医者の端くれでございます。手にした包みの感じから、中に入っている物を推量するようにじっと眺めるのです。
「あら丁度ようございましたわ、典薬助殿。それは、とっても精の付く薬草なんでございます。
三の君様の婿君に煎じて差し上げたいのですが、どのようにしたらよいか分からなくて。典薬助殿なら、お分かりになるのではなくて?」
典薬助に大した知識が無い事など、夏月も分かっております。けれど、『精の付く』という言葉が聞き捨てならない典薬助は、にやにやと下卑た笑いをこぼしました。
「ほほう、なるほど。精が付く薬草とな。どれどれ、わしが試しに煎じて飲んでみましょうかの」
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