第六章

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実は夏月が飲ませた薬草に、精が付く効能などなく、飲めば腹を下してしまう煎じ薬だったのです。 少量ならば、お通じを整える効果がありますが、精が付くという言葉に騙されて、典薬助はたっぷりと葉を砕いて飲み干してしまいました。 「これできっと、典薬助殿は、落窪様に夜這うどころではありませんわ」 「夏月さん、本当にありがとう。このお邸に姫様の味方をしてくださる方がいて、どんなに心強い事か……」 いつも一人きりで頑張っていた阿漕は、夏月の協力が嬉しくて堪らないのです。 「いいえ。本当はもっと早くに何かして差し上げるべきでしたわ。 それに、北の方様の手前、皆表立っては申しませんけど。落窪様や阿漕さんに心を寄せる女房も多いのですよ? 私、明日は賀茂祭りの行列見物に加わらなければなりませんけど、無事落窪様を助け出して落ち着いたら、私もそちらに呼んで下さるかしら」 「もちろんですわ。姫様もきっとお喜びになると思います」 二人は手を取り合って、幸せな未来に思いを馳せたのでございます。 その為には、落窪姫を無事助け出さねばなりません。 阿漕は最後の仕上げに、物置部屋に向かいました。
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