第六章

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夜が深まった頃、典薬助は鍵を持って物置部屋に訪れました。 けれど、錠を解いて戸を開けようとしても、それがピクリとも動かないのです。 「おかしいのう。戸がちっとも動かんじゃないか。 これ、お姫さん。まさか婿であるわしを、締め出そうとしておいでなのか」 典薬助の声に、落窪姫は肩を震わせます。 どうか戸が開きませんようにと、神仏に手を合わせて落窪姫が祈っていると、典薬助は、自分の腹がゴロゴロなる音を聞きました。 (はて、なんじゃか腹の調子が……) 両手で温めるように擦っても、腹の中がどんどん動きを強め、キリキリとした痛みまで走ります。 近くの部屋に身をひそめて様子を窺っていた阿漕も、典薬助の変化に気付いて目を凝らしました。 (あらあら。そろそろお薬の効き目が出てきたようね……) 「おほっ、腹が……」 典薬助は、ぎゅうぎゅうと締め付けるような腹の動きに、立ったまま身をかがめて悶えております。 その内、ゴロゴロと鳴っていただけの腹から、ビチビチと音を立てて便が漏れ、尻に気持ちの悪い感触が広がりました。 「あいやっ、これはいかんっ!」
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